ショートショートな日々。

ショートショート的なものを綴ります。

デカレンジャー

お題「子どもの頃に勘違いしていた、ちょっと恥ずかしいこと」

 

祖父母の家に帰省していた時のこと。

 

叔父もその時は帰省していたので、

わたしと叔父と母親は3人でなんとなく

テレビでやっていたデカレンジャーを見ていた。

 

あまり知識がなかったもので、

それを見ながら一言。

「デカくないじゃん」

 

周りは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。

「え?」と聞くと、

デカレンジャーのデカって、刑事のデカだよ!大きさじゃないよ!」

 

そりゃ、デカくないわけだ。

 

 

隣の芝生はなんとやら

「わたし仕事辞めようと思うんです」

 

ある日のランチ中、後輩が席について注文を終えるなりそう放った。

 

「どうして…また急に…」

彼女は違う店舗で働いていて接客や事務的な作業も申し分なくテキパキ働いていて評価も高かった。

 

「なんかー、人間関係もうまくいかないし、

新卒で入社してわからないことだらけなのに教えてもくれない!営業もノルマあってしんどい!給与もやっすいし!やってらんないんです」

そう言って確か去年も2人辞めていったな。

 

「仕事は決まったの?」と聞くと

「ぜんぜん!辞めてから考えます!」と大抵返ってくる。

のも、目に見えていた。

 

「んーー、でも3年でしょ?うちの会社割と休み申請すぐ通るし、もったいなくない?転勤希望出したら変わるかもよ?〇〇さんも別店舗に行ってから続いてるし…」

 

咄嗟に思いついたありきたりな止めセリフを彼女に投げかけた。

 

「えーーなんかもういいです!3年頑張ったし!

友達が事務系の会社行ってよさげなんでー、わたしもそっちにいこかなーって!

でも、先輩には愚痴とか聞いてもらってたんで言っとかなきゃ思って!」

 

長い髪の毛を手櫛で軽く整えながら彼女はあっけらかんと言い放った。

 

そうして彼女は去年の春に去っていった。

 

人づてに聞いたが、彼女は職を転々としているらしい。

 

簡単なデータ入力の仕事にいけば単調でつまらない。

給与が高けりゃ残業がしんどい。

小企業にいけば飲み会がめんどくさい。

 

となりの芝生はなんとやら…ね」

 

この仕事も今の彼女には青く眩しく見えるのだろうか。

 

下校と影

「一緒に帰ろうと思って…」

 

化粧っ気もなく、一重のうす顔でどこにでもいるようなふつーの女子高生だ。

彼女は、うちの部活の部員と付き合っている。

 

「え、今日遅いから帰ってねって言ってたじゃん!寒かったでしょ…ありがとう」

部活が終わる頃に合わせて下駄箱で待っていたのだろうか。

寒い手を擦り合わせたりして待っている。

なんて健気な女だろう。

 

周りからひゅーひゅーなんて茶化されて

少し照れくさそうにして帰る。

「じゃあ、帰るわ〜!じゃあな!

マネージャー、お前一応女だから気をつけて帰れよ笑」

「うっさいな!わかってるし!!

早く帰んなよ!」

 

2人で並びながら歩いて帰っていく。

西陽が眩しくて、

つい視線を下にそらした。

そこには、大きな影が2つ仲良さそうにのびていた。

その影のうちの1つに、本当はわたしがなりたかった。

プロポーズを待つ女

私は、この前彼氏からプロポーズを受けた。

よく行く飲み屋で常連客から囃し立てられて、

半ば強引に彼氏が言ってきた。

 

私は嬉しい反面こう思った。

「あぁ、この人多分結婚しないな」

 

彼氏と同棲し始めて約2年。

結婚に焦る時期でもあるので、

「いつ結婚してくれるの?」としつこく聞いていた。

あまりにもしつこいからだろう。

「今年中」とだけいつも彼は答えていた。

 

秋だ。

結局"するする詐欺"をして、

彼氏は母親に「しようと思う」から話を進めていない。

12月になった。

彼氏は自ら結婚を切り出すことはない。

もう"席を入れた気でいるのだ"。

 

"今年中"という呪いに縛られたまま、

私は彼からの本当のプロポーズを待っている。